ごあいさつ

 戦後日本の文化財をめぐっては、文化財保護法成立のきっかけが法隆寺金堂壁画の焼失などにあることから、かつてはその保護・保存を第一にしていましたが、近年ではあわせてその利用・活用を図る方向に軸足を置きつつあります。国の方針はもちろん地方の施策にあっても、文化財の保護を訴える時、どのように活用していくのか、その計画を問われるようになりました。

 こうした中、京都市内では、明治時代の日本の新しい学制に先立って、室町時代以来の地域単位である番組が基礎となって小学校を設立・運営し、その伝統は今でも受け継がれています。そこでは、地域の人々が学校に持ち寄った民具資料や考古資料、美術工芸品や文献・写真資料が、地域のある種の「たから」として学校に保管・保存されてきました。そして教材として資料整理され、空き教室や廊下の一部、階段下などを利用した収蔵施設や展示施設も併設されるなど博物館類似施設も多くつくられてきました。中でも最も量が多い民具をはじめとするこれらの資料は、学芸員や研究者が恣意的に収集したものではなく、地域の人々が自分たちの暮らしの中で伝えたいものを、地域の中心でもある小学校に自発的に持ち寄ったものです。

 私たちのグループは、地域の文化遺産としてのこれら質量ともに充実した民具資料の活用を促進し、地域教育および地域活動の資源として再発見するため、文化庁の補助事業として「学校収蔵民具の再発見事業」を計画しました。この事業を通じて、地域の学校に集めて保存し、さらに教育現場での学習教材となってきた民具資料などの様子、さらには学校が博物館類似施設として活用されている現状を紹介することによって、地域での文化財の保存と活用がさらに展開されることを期待しています。

 これまで保存に努められてきた明治以来の地域の人々に敬意を表しますとともに、今回の事業にご協力いただいた方々にお礼申し上げます。

学校収蔵民具の再発見事業実行委員会

委員長 用田 政晴

 

 

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